「つかむとキズがつく」を卒業したい人へ。IPS ソフトタッチネオ NH-165を使ってみた
アクセサリーの金具、楽器のパーツ、車のメッキ部品……。「これ、普通のプライヤーで挟んだら傷だらけになりそう」と手が止まった経験はありませんか。金属製の先端そのままのプライヤーは握力が伝わりやすい反面、対象物にギザギザの跡を残してしまうことが少なくありません。
結論から言うと、IPS PLIERSの「ソフトタッチネオ NH-165」は、そうした「傷をつけたくないけどしっかり挟みたい」というジレンマに向けて作られたコンビネーションプライヤーです。新潟県燕三条で83年以上プライヤーだけを作り続けてきたメーカーが、2023年にグッドデザイン賞を受賞して送り出した進化形モデルになります。この記事では、実際に使ってみた立場から、旧モデルとの違いや向き不向きも含めて率直にまとめます。
比較表:NH-165 vs 旧モデルPH-200 vs 一般的な金属製プライヤー
ソフトタッチネオ NH-165がどんな立ち位置の工具なのか、同社の旧モデルと一般的な金属製プライヤーを並べて比較しました。
| 項目 | IPS ソフトタッチネオ NH-165 | IPS ソフトタッチコンビ PH-200(旧モデル) | 一般的な金属製コンビネーションプライヤー |
|---|---|---|---|
| 全長 | 168mm | 206mm | 150〜200mm程度(製品による) |
| 本体重量 | 約175g | 約270g | 200〜350g程度(製品による) |
| 最大口開き幅 | 30mm | 25mm | 製品により異なる |
| 切断可能径(軟線目安) | 約2mm | 約2.6mm | 製品により異なる |
| くわえ部の素材 | 新開発の特殊樹脂(キャップ式・工具不要で交換可能) | POM樹脂(交換にはやや手間がかかるタイプ) | 金属地肌のまま、または一体成形の樹脂被覆 |
| グリップ機構 | バネ駆動&バネ解除機構、トリガーグリップ | 通常のジョイント方式 | 製品により異なる |
| 表面処理 | カチオン電着塗装(メッキ比で錆びに強いとされる) | カチオン電着塗装 | メッキ仕上げが主流 |
| 対象物へのキズのつきにくさ | 高い(樹脂くわえ部・薄歯設計) | 高い(樹脂くわえ部) | 低い(金属地肌が直接当たりやすい) |
| 保証・修理体制 | 国内メーカー直販あり、交換樹脂の単品販売にも対応 | 同上 | 製品・販売店により異なる |
| 向いている用途 | DIY・ホビー・軽作業全般。手が小さい人や女性ユーザーにも扱いやすいサイズ | やや大きめの対象物や、しっかりした握り応えを求める作業 | 金属そのものをがっちり掴む作業、キズを気にしない用途 |
| コストパフォーマンス | 3,000円前後(税込)。機能面を考えると妥当な価格帯 | 1,500〜2,700円程度(税込・販売店により変動)。価格重視ならこちら | 数百円〜数千円と幅広い |
※価格は執筆時点の各販売店掲載情報を参考にした目安です。実売価格は変動するため、購入前に必ず販売店・メーカー公式サイトでご確認ください。
IPS PLIERSというメーカーについて、そして「傷をつけない」という選択肢
IPS PLIERS(旧社名・五十嵐プライヤー)は、1940年に新潟県三条市で創業した、国内では珍しいプライヤー専業メーカーです。現在は見附市に本社を構え、スリップジョイントプライヤーだけで80種類を超えるラインナップを持つなど、「プライヤーだけを作り続ける」という一点にこだわってきた会社です。1988年に発表した「挟んだ物が傷つかない」ソフトタッチシリーズは、当時のDIY業界の新商品コンクールで受賞するほど画期的な発想で、以来30年以上にわたって主力商品として展開されてきました。
一方で、通常の金属製プライヤーにも当然メリットはあります。くわえ部が金属そのものなので、滑りにくく強い力を伝えやすいこと、価格が安価な製品も多いことなどです。「対象物に多少の跡がついても構わないので、とにかくしっかり掴みたい」という用途であれば、樹脂パーツのない一体型の金属プライヤーの方が向く場面もあります。ソフトタッチネオはあくまで「キズをつけたくない」というニーズに特化した工具であり、万能ではないという点は正直にお伝えしておきたいところです。
金物屋スタッフの本音
執筆者の実機経験について:今回のNH-165は実際に購入して使用した経験があります。以下は実機での使用感と、店頭での接客経験を踏まえた内容です。
実際に手に取ってまず感じたのは、旧モデルのPH-200と比べて「軽い」という一点です。数値上も270gから175gへと3分の2近くまで軽量化されていますが、実際に片手で長時間作業をしてみると、この差は数値以上に体感できます。特に手首を返しながら細かい部品を挟む作業を繰り返す場面では、旧モデルだと途中で少し疲れを感じていたのが、NH-165ではかなり楽になった印象です。ただし、その分「がっしり感」は薄れるので、大きめの部品を力強く挟みたい人には物足りなく感じる可能性もあります。
店頭で接客していると、「メッキパーツを傷つけずに外したい」「楽器の金具を調整したい」といった相談は季節を問わずコンスタントにあります。そうしたお客様には、まず「何を挟みたいか」「対象物にどのくらいの力が必要か」を確認した上で、細かい部品中心ならNH-165、やや大きめの部品や長時間の握力が必要な作業ならPH-200という案内をすることが多いです。実際、NH-165は口開き幅が30mmとPH-200の25mmより広いにもかかわらずコンパクトなので、「小さいけど口は開く」という一見矛盾したニーズに応えられる製品だと感じています。
正直な留保点として、くわえ部の樹脂パーツはあくまで消耗品である点はお伝えしておく必要があります。頻繁に硬いものを挟んだり、無理な力をかけたりすると樹脂が摩耗・破損する可能性があります。メーカーも交換用樹脂を単品販売しているのはそのためで、「一生モノとして永久に使える」というより「消耗品込みで長く付き合っていく工具」という捉え方が実態に近いと感じています。この点は使う前に知っておいた方が、購入後のギャップが少ないはずです。
現場目線・実用目線で見るNH-165
- 初めてプライヤーを揃える人:汎用性の高いコンビネーションタイプなので、最初の1本として選んでも失敗しにくいです。ただし切断能力は軟線2mm程度が目安なので、太い針金や硬い金属線のカットが多い人は別途ニッパーやカッターの併用を検討してください。
- コスト重視で選びたい人:価格だけを見るなら旧モデルのPH-200の方が安価な傾向にあります。軽さや口開き幅の広さといった機能差に予算を割く価値を感じるかどうかで判断すると良いでしょう。
- 長く使いたい人:くわえ部の樹脂が交換可能な設計なので、本体を買い替えずに消耗パーツだけ交換しながら使い続けられる点は長期利用に向いています。
- DIY用途/プロ用途:ホビーや家庭でのメンテナンス作業には十分すぎる性能です。プロの現場で日常的にハードな使い方をする場合は、金属製の専用工具と使い分ける前提で「傷をつけたくない場面専用」として1本持っておく、という位置づけが現実的です。
おすすめモデル紹介:IPS ソフトタッチネオ NH-165
特徴:新開発の特殊樹脂をくわえ部に採用し、対象物を傷つけずにしっかりホールドできるコンビネーションプライヤーです。全長168mm・重量約175gとコンパクトかつ軽量ながら、最大口開き幅は30mmと従来品(PH-200)比で30%広くなっています。バネ駆動&バネ解除機構とトリガーグリップにより、開閉操作がスムーズなのも特徴です。くわえ部の樹脂はキャップ式で工具を使わずワンタッチ交換できます。
メリット:①軽量で扱いやすく、女性や手の小さい人でも疲れにくい ②口開き幅が広くコンパクトサイズの割に対応できる対象物の幅が広い ③樹脂パーツが工具不要で交換できるため、メンテナンスの手間が少ない ④2023年グッドデザイン賞を受賞するなど、機能性が第三者評価でも認められている。
デメリット:①金属製プライヤーと比べると強い握力を伝えにくい場面がある ②切断能力は軟線2mm程度までとやや控えめ ③樹脂パーツは消耗品であり、使い方次第で交換が必要になる。
おすすめユーザー:メッキパーツ・楽器金具・アクセサリー・プラスチック部品など「傷をつけたくない対象物」を扱う機会が多いDIYユーザー、ホビー用途の人、力の弱い方や長時間作業で疲れにくい工具を探している人。
購入時の注意点:型番が似ている旧モデル「PH-200」や、姉妹品の「ソフトタッチネオ ウォーターポンププライヤー NWH-175」などと混同しないよう、型番(NH-165)をよく確認してから購入してください。また販売店によって価格差があるため、複数のショップを比較することをおすすめします。
メンテナンス方法
ソフトタッチネオのお手入れは難しくありません。使用後は挟み跡やホコリを乾いた布で拭き取るだけで基本的には十分です。水回りで使った場合は、水分が残らないようしっかり乾かしてから保管しましょう。表面には錆に強いとされるカチオン電着塗装が施されていますが、樹脂くわえ部と金属部の接合部分に水分がたまりやすいので注意してください。
可動部の動きが渋くなってきたと感じたら、ミシン油など粘度の低い潤滑油をジョイント部にごく少量差すと動きが戻ることがあります。差しすぎると逆にホコリを呼び込む原因になるため、必要最小限にとどめるのがポイントです。くわえ部の樹脂が欠けたり摩耗して掴む力が弱くなったと感じたら、無理に使い続けず交換用樹脂パーツへの交換を検討してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. NH-165とPH-200、結局どちらを選べばいいですか?
A. 軽さとコンパクトさ、口開き幅の広さを重視するならNH-165、価格の安さや従来からの安心感を重視するならPH-200が向いています。用途に応じて使い分けるのも一つの方法です。
Q2. 金属を切断する用途にも使えますか?
A. 軟線であれば直径2mm程度までのカットに対応しますが、あくまで補助的なカッター機能です。太い金属線や硬線を頻繁に切る用途には専用のニッパーやワイヤーカッターを使うことをおすすめします。
Q3. くわえ部の樹脂が傷んだ場合、自分で交換できますか?
A. NH-165はキャップ式の樹脂パーツを採用しており、工具を使わずに着脱できる設計です。メーカーが交換用樹脂を単品で販売しているため、初めての方でも比較的簡単に交換できます。
Q4. 水回りの作業で使っても錆びませんか?
A. 表面にはメッキ品と比べて錆びに強いとされるカチオン電着塗装が採用されています。ただし完全な防水・防錆を保証するものではないため、使用後は水分をしっかり拭き取って保管することをおすすめします。
Q5. プロの現場でも通用する性能ですか?
A. ホビーやDIY、軽作業のメンテナンス用途には十分な性能ですが、金属をがっちり掴んで力をかけるハードな用途には、金属製の専用プライヤーとの併用をおすすめします。「傷をつけたくない作業専用」として1本持っておくプロの方もいます。
結論:あなたにはどのタイプが向いている?
- DIY初心者:汎用性が高くキズもつきにくいNH-165は、最初の1本として選びやすい工具です。
- プロ・職人:メイン工具というより「対象物を傷つけたくない場面用」のサブ工具として持っておくと重宝します。
- コスパ重視の人:価格を抑えたいなら旧モデルPH-200も検討候補に入ります。
- 性能重視の人:軽さ・口開き幅・メンテナンス性のバランスを求めるならNH-165がおすすめです。
- 長く使いたい人:樹脂パーツが交換可能なNH-165は、本体を買い替えずに使い続けやすい設計です。
まとめ
IPS ソフトタッチネオ NH-165は、「対象物を傷つけずにしっかり掴みたい」というニッチながら確実に存在するニーズに対して、燕三条のプライヤー専業メーカーが本気で応えたモデルだと感じました。旧モデルのPH-200と比べて軽量化・口開き幅の拡大・メンテナンス性の向上という着実な進化が見られる一方、金属製プライヤーの持つ「力強さ」を代替するものではない、という点は正直にお伝えしておきたいポイントです。用途と予算に応じて、旧モデルや金属製プライヤーとの使い分けも視野に入れながら検討してみてください。
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この記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。最新の価格・仕様はメーカー公式サイトをご確認ください。
参考情報・出典
- IPS PLIERS公式サイト:https://ips-tool.co.jp/
- IPS PLIERS公式オンラインショップ SOFTTOUCH Neo combination 165mm NH-165 製品ページ:https://ips-tool.co.jp/shop/archives/1365
- IPS PLIERS公式オンラインショップ ソフトタッチ コンビ PH-200 製品ページ:https://ips-tool.co.jp/shop/archives/594

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